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美容師バラバラ殺人事件~犯人像分析の限界と偏見

昨日、NHKの「News Watch 9」で、2007年に発生した京都精華大学生殺害事件を
「プロファイリング」を用いて新たな角度から捜査している、という話をしていました。

ベテラン刑事は「犯人は日常的に粗暴な男」という見立てで捜査していたのですが、
分析官は「大人しくて気が弱い人物がナイフを所持している場合も多い」と指摘し、
さらに寒い夜に薄手のジャンパー姿だったことから「犯人は近所に住む者」と発言していました。

「なるほど」と思いつつも、プロファイリングの正確性について考えてしまったのは、
たまたま先日「美容師バラバラ殺人事件」の新聞記事を調べていたせいかもしれません。



1994年3月、福岡県と熊本県の高速道路パーキングエリア、コインロッカー、山林から
人間の遺体の一部が相次いで見つかりました。

鑑定の結果、それらはすべて同一人物のパーツであることが判明。
ほどなくして、被害者は福岡市在住の女性美容師Iさんだと分かります。

Iさんは若くて美人であったため、「性的な動機に基づく猟奇殺人ではないか」
という見方が支配的だったようです。


犯罪心理学者も次のような分析をしています。

・・・時間の経過とともに一段と異常性が明らかになる事件を、社会病理現象に詳しい
平兮元章福岡大人文学部教授(犯罪社会学)に分析してもらった。


胴体から切り取られていた部分は性に関するもの。
欲望の発現形態が非常に屈折していることの表れで、
性的な殺人事件の可能性が大きい。
さらに殺害後、死体を切り刻んでおり、
死体愛好者(ネクロフィリア)的な面もうかがえる。

正しい性教育を受けないまま、
性に関する情報過多に巻き込まれたのではないか。
猟奇的ストーリーの性ビデオや漫画などから、
自分で勝手に性的な「女性像」をつくりあげたと考えられる。
趣味的で凝った犯行が見てとれるため、二十代から三十代前半で、
かなり「オタク」の要素が濃い犯人像が浮かぶ。

以上の点では埼玉の「幼女連続殺人事件」と似ているが、
埼玉事件の容疑者が殺害後は死体を隠そうとしていたのに対して、
今回の犯人は、さらに死体を見せようとしているのが大きな特徴だ。

バラバラ殺人には、小さく切って隠しやすいようにするための場合もあるが、
今回は違う。高速道路PAのごみ箱なら死体は焼却される可能性もあるが、
駅のコインロッカーはいつか必ず発見される。
「見つけてほしい」という犯人の願望さえ見て取れる。

右腕があった山川PAで左手首が見つかったが、犯人は故意に
左右逆の部分を同じ場所に捨て、捜査当局や社会になぞかけをしているとも思える。
死体が次々と見つかる過程を楽しんでいるようで、
「劇場型犯罪」の要素が加わった、かなり複雑な異常心理だ。
(談)



西日本新聞は福岡県で最も発行部数が多い新聞です。
翌朝刊にも載ったこの分析を、犯人が目にした可能性は大だと思われます。

そして、きっと犯人は、あまりの見当違いにホッとしたでしょう。


数日後、遺体を包んでいた広告の配布範囲から、Iさんが勤めていた美容院の
経理担当者が容疑者に浮かんできます。
Iさんと経理担当者の仲は以前から険悪でした。

その経理担当者は、平兮教授の分析とは全く異なり、
夫と子供のいる中年女性でした。

問題のパーキングエリアに向かうところをNシステムで捕らえられていたこと、
通行券に彼女の指紋が付いていたこと、
Iさんの時計や手帳を隠し持っていたこと、
が証拠となり、経理担当者は逮捕されました。


バラバラにした目的は、細かくすることで遺体を捨てやすくするために他ならず、
人目に付く場所にも捨ててしまったのは、単なる事前計画不足でした。

決して見つかる過程を楽しんでいたわけでないことは
被害者の身元がバレるのをおそれて頭部を捨てきれず
自宅まで持ち帰り、燃えるゴミとして捨てたことから分かります。

死体の解体方法と見つかりにくい遺棄方法に精通していなかったことが、
性的動機による猟奇犯罪に見誤られてしまうという皮肉な事件でした。


それにしても、この分析にはアニメや漫画の「オタク」への偏見が
あまりにも強く反映されているのではないでしょうか?

この事件が起きた1994年は、まだインターネットが普及していませんでした。
2010年代の「性に関する情報過多」は、その頃とは比べようもありませんし、
猟奇的ストーリーの性ビデオや漫画はネット上に溢れています。
この間、性教育がそれをカバーできるほど「正し」く改善されたとはいえません。

彼の理論に従えば、インターネットの普及に伴って
猟奇犯罪を行う人が激増しているはずですが、実際には違いますよね・・・

平兮教授は2008年、西日本新聞にこのようなことを語っています。

死刑が執行された幼女連続誘拐殺害事件の宮崎勤死刑囚(45)。
現代型犯罪のはしりともいわれ、その後も猟奇的な犯罪は繰り返されてきた。
8日には、東京・秋葉原で無差別殺傷事件が発生したばかり。
「社会の病根は断たれていない」。九州の関係者からも不安の声が聞かれた。

「情報化や人間関係の希薄化が進む中、
 ホラービデオやコミックの影響を受けた現代型犯罪のはしりだった」。
福岡大人文学部の平兮(ひらな)元章教授(犯罪社会学)はそう分析する。
最近でも2004年以降、奈良、広島などで女児誘拐殺害事件が相次いで発生。
平兮教授は「『人間は死んでもよみがえる』と話す子がいるなど、
現実と空想の違いが分からなくなる人たちが増えている」と危機感を募らせる。



「人間は死んでもよみがえる」という言葉は新約聖書に
嫌というほど出てきますが・・・
「現実と空想の違いが分からなくなる人たちが増えている」という
統計的な根拠が知りたいものです。数の増減にかかわらず、そういう人は何らかの知的障害を抱えているので
治療やカウンセリングを受けさせる必要性はあるでしょうけど。




さて、昨夜のNews Watch 9では大越キャスターが
「誤った予断に頼ることなく客観的で科学的な根拠で犯人を絞っていくことが重要」
と結んでいました。

大いに賛同しつつも、やはり危惧を抱いてしまいます。


プロファイリングは「刑事の勘」に比べれば客観的で科学的と言えるのかもしれませんし、
捜査機関が限りあるリソースを集中選択する目的で使うのには有効なのでしょう。

しかし、統計や科学に基づかない犯人像分析がなされれば、「刑事の勘」と大差なく、
真犯人から遠ざけるのみならず、偏見を助長したり冤罪を生み出したりする危険を伴います。


島根女子大生バラバラ事件や井の頭公園バラバラ事件についても
私達はある種の予断を持っているように思えます。

犯人は意外な人物かもしれません。


    (2012/01/16 小修正、タイトル変更)
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