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情報の正確性について

このブログでは記事を書くに当たっては、
できる限り複数の資料を用いています。

しかし、資料によって数字や情報がバラバラなことがあり、
少々悩んでしまいますが、それ以上に興味をそそられます。


たとえば、(1)プノンペンの日本橋が爆破された年

多くの資料で1973年となっているのですが、
カンボジアの日本橋 (3) 日本橋の復活」で紹介した
朝日新聞の記事では、1972年となっているのです。

これは、日本語文献でも英語文献でも
大多数の資料が1973年となっているので、
おそらく朝日新聞が間違っているのでしょう。

とはいえ、「1973年説」が共通の情報源に依っていて、
その情報源が間違っている可能性がゼロだと
断言することはできませんが。



正誤を論理的に結論付けられる場合もあります。

カンボジア王子と結婚した日本人女性」で紹介した
(2)向田邦子さんのエッセイ「鉛筆」の発表年。

『向田邦子全集』新版第11巻の巻末に、向田氏の創作活動年表があるのですが、
「鉛筆」の発表が昭和53年の欄と昭和56年の欄に重複しているのです。

どちらかが間違いであることは明白です。

これを解く手がかりは、本文中の
「奇跡的に生きながらえ、救出された日本人妻のニュースが伝えられた頃」
という記述です。

内藤泰子さんの手紙が日本に届いたのは、昭和54年5月ですから、
昭和53年の文章であるはずがありません。

よって、昭和56年が正しいと結論付けることができます。



同じく「カンボジア王子と結婚した日本人女性」で紹介した
(3)ノロドム・キリラット王子のお妃「きく子」さんの名前
資料によって別の漢字表記になっていると書きましたが、
実は苗字もあやふやなのです。

内藤泰子さんに続いてカンボジアから生還した
細川美智子さんの手記『カンボジアの戦慄』には
「辻紀久子」と書かれていたので、それに拠りました。

しかし、NHK島村矩生氏の「内藤泰子救出記」に書かれた
抑留日本人妻のリストに「辻」という苗字の女性はいません。

代わりに「清水きく子」という名前が見られますが、
彼女がキリラット王子の夫人であるとの記述はありません。

外国の王子様と結婚し、政変で行方不明になるという
ドラマチックな人生を歩んだ悲劇の女性なのに、

名前すら正確に分からず、しかも、
現時点でネット上に彼女の情報が皆無とは、
何とも不思議で、同時に寂しい気がします。



(4)渡辺史郎さんが連行された年に至っては
1976年、1977年、1978年とバラバラです。

ただし、「カンボジアの日本橋 (1) 消えた日本人技術者」で紹介した
島村矩生氏がホテルの従業員から訊いた話に出てきた「ヒエン」が
渡辺さんと別人であれば、1976年説は根拠を失います。

1977年説と1978年説は、どちらも一次情報源が家族です。

「1977年」は1985年に妻から、「1978年」は1992年に長男から、
ジャーナリストが聞き出したものです。

どう考えるべきでしょうか?

内藤泰子さんも細川美智子も、夫が死んだ日を
正確に覚えていたのに対して、細川美智子さんの長男は
父が連行された年は覚えているものの「月日は覚えていない」と
1990年代にインタビュー集『アジア定住』で述べています。

妻の方が幼い子供より、記憶すべき日付は正確に覚えていそうです。
また、7年という年月が記憶を朧気にした可能性もあります。

そう考えると、妻の証言すなわち1977年の方が正しい
という推理が成り立ちますが、根拠が薄すぎますかね。



細川さん親子といえば、(5)ゴキブリをめぐる証言の食い違いがあります。

細川美智子さんの『カンボジアの戦慄』には、あまりの餓えから
「息子たちはゴキブリを食べていた」という記述があるんですが、
長男は『アジア定住』のインタビューで
「さすがにゴキブリは食べなかった」と証言しています。

これは難しいところです。

記憶の減衰を重く見れば、これも母親の証言が正しいように思えますが、
ゴキブリを食べたか食べなかったかという「実体験の記憶」ですから、
長男が食べていないと言っている以上、母親の見間違えの可能性もあります。

いずれにせよ悪意のない記憶違いです。



他にも、(6)渡辺史遍さんと妻の年齢差が、
1985年の来日時の報道では「妻が4歳年上」とされていたのに、
1992年の新聞記事では2歳差になっています。

これは来日直後は混乱で正しく伝わらなかった可能性が考えられ、
後者が正しいのかなと思います。



最後に、これを言っちゃおしまいかもしれませんが、
ここに挙げた相違点はどれも本筋を語る上で
本質的で決定的なものではありません。

だからこそ、検証されず放置されてきたともいえます。

些細な相違に根掘り葉掘りパラノイックになっても
推論という作業自体は面白いのですが、
「これが正解」と断言できる結論に至ることはできず、
時間や労力の無駄に終わりそうです。



したがって、私の方針としては、このような資料間の相違点に関して
容易に正誤を指摘できない場合は無理に「正解はこっち」と結論づけず、
「こっちの資料ではXだけど、別の資料ではY」という風に
両方の情報を並記しておくに留め、
検証は読者にお任せしようと考えています。
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mogx2 (もぐもぐ)

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つくばに隕石が落ちた直後に生まれたらしい。

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